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相談事例

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納税資金確保のために不動産を売却した事例のご紹介

平成**年6月 ご相続発生

いつも手土産を持参され事務所に顔をだしては職場の雰囲気を明るくしてくれたお客様が亡くなられた。まだまだ人生を楽しんでいただきたかったし、あの笑顔がもう拝見できないと思うと本当に残念な気持で気分が滅入った。
生前、相続について事あるごとにお話しはさせていただいていたが、「うんわかったそのうちな」とはぐらかされてきた。もっと強引に提案すれば良かったかなと後悔の念もわきたったが、わが道をゆく性格とその人柄を思うに提案しなかったことも正解だったのかなとも思った。

申告の依頼

早速、ご相続人より相続税の申告に関する依頼をいただく。事務所のお客様でもあり、毎年の確定申告の内容や所有されていた不動産の多さから相当の税金が予想された。手元現預金の残高はまだ把握できていなかったが、納税資金を確保するためには何らかの対策が必要なことは容易に想定された。49日前にご依頼いただいたこともあり、ご相続人にご了解をいただいたところで、不動産の調査を開始することにした。

不動産資料収集

不動産調査資料として弊社では不動産調査用手控えを作成している。
手控えの内容は、住宅地図、公図、測量図、登記事項証明書、路線価図、倍率評価表、評価証明書等である。これらの資料を不動産の利用状況ごとにまとめておくのである。
通常、不動産の利用状況や所在地はご相続人にヒアリングしたところで把握することになるのだが、今回は弊社のお客様のご相続であり、毎年の確定申告時に固定資産税明細もお預かりしており、利用状況もある程度把握していたので、資料収集と同時に手控えを作成することとした。
固定資産税明細をもとに、法務局、市役所等で資料収集を行った。
資料収集後、固定資産税明細と照合しつつ住宅地図、公図、測量図、に該当箇所をマーカーで色塗りし、手控えを作成するとともに、後日の役所等現地調査のために不動産の利用状況別に不動産チェックリストを作成した。このチェックリストに用途地域、接道状況、土壌汚染、埋蔵文化財、環境(水道、ガスインフラ状況)等調査結果を記入していくことになる。

平成**年7月 ご相続人との打合せ

被相続人のご自宅にて相続人と初めての打合せを行う。
相続人は被相続人の配偶者と3人の直系卑属(子供)ということで紹介を受けたが、相続手続きでまずしなくてはならないことは誰が相続人であるかとういうことで、その確定作業は、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍を確認することで行う旨説明を行った。
また、今後相続税申告、納税までにやらなくてはならない作業内容を打合せ資料に基づき時系列で説明したのち、申告に必要な資料、書類の取得のご依頼をした。(※ご用命いただければ当社で取得致します)
また、今回の相続手続きに関する委任契約書の内容説明を行い、署名捺印をいただいた。
一通りの説明が終了したのち、相続人に同行いただき、不動産の現地案内を受けた。
後日役所確認を含む不動産現地調査をさせていただくことにご了解いただき、第1回目の打合せが終了した。
被相続人の生前のご様子や思い出話しを拝聴し印象に残ったことは、相続人の被相続人に対する思いであり、ご遺族の仲の良さであった。

現地調査、役所調査

相続財産のうち、金融資産は誰が評価しても同じである(1円は1円である)が、不動産、特に土地はその財産評価額の算定は100人の税理士がいれば100通りの結果となるといわれる程評価する税理士によって評価額に差がでる財産である。
相続税における不動産の評価方法は、原則は財産評価基本通達に定められているが、その決まり事の内容を熟知しているか否かで評価額に差がでるのである。評価減できるものを評価減しなければ当然財産額は高くなり、結果相続税を多く納めていただくことになってしまう。
どれだけの減価要因があるのか、その要因は適用できるのかをひとつひとつ検討し、評価額を算出することになる。その評価の減価要因を探るため、現地調査や役所調査を行うわけである。
確認項目は多岐にわたるため、不動産の評価額算定にはかなりの時間を要する。
現地調査、役所調査の結果を不動産チェックリストに記入しながら、検討事項の洗い出しを行う。洗い出しの結果、判断に迷う不動産が複数あることが判明した。
今回の相続は財産のほとんどが土地であり、財産の総額をいち早く相続人に報告するためにも事務所の作業タイムスケジュ-ルを前倒しで設定した。

平成**年8月 広大地可否判定依頼

不動産の現地調査の結果、広大地として評価減の可能性がある土地が何か所かあった。
広大地とは著しく土地の面積の広い土地ことをいい、一定の要件を満たせば相続税評価額を相当程度減額することができる。
広大地として評価減できれば相続税額を相当圧縮できる効果がある反面、その適用の可否には相当注意を要することとなる。適用要件を検討するも結論がでなかったので提携先の不動産会社に広大地可否判定をお願いした。

ご相続人との打合せ

相続人からお預かりした預金等の財産資料および不動産会社からの広大地可否判定結果、不動産調査結果を元に相続財産額、相続税額を算出し、財産目録を作成する。お亡くなりになったときに懸念していたとおり、今回の相続では納税資金が最大の懸案事項であることが明らかとなった。打合せ資料を作成のうえ、相続人との打合せを行う。
不動産の評価概略を中心に財産内容の説明を行い、納税をどのように行うか相続人のお気持ちを確認する。納税には現金一括納付、延納による分割納付、物納による物での納付の3つの方法があること、その中でも現金納付が原則であることを説明する。
結果、不動産を売却し納税資金を確保する方向で検討することとなった。どの土地を処分すべきか納税額から見当をつけ売却候補地を決定した。不動産売却には時間がかかる旨ご説明し、早急に売却手続きに入ることを確認した。
併せて遺産分割に言及し、相続人にヒアリングした結果を元に、次回打合せまでに分割に関するアドバイスをすべく分割案を弊社で作成することをお約束して打合せを終了した。

平成**年9月

会計事務所として相続財産の分割のアドバイスをする場合、最も相続税が節税できる案を提示することを常に念頭に置きつつ策定することだと思うが、一番重要なのは相続税の節税もさることながら、被相続人の生前の思いや相続人の思いを大切にすることだと思う。どんなに節税効果がある案だとしても意に沿わない財産承継では意味がなく、税額を度外視した分割も税額が増えることを説明のうえ、場合によってはお話しする必要があると思う。弊社では分割アドバイスをする場合は必ず相続人の思いをヒヤリングさせていただいている。
今回の相続も各相続人の思いを前提に売却予定地も考慮にいれた分割案を作成し、相続人に説明した。
また、この打合せには売却手続きをお願いする不動産会社の担当者にも同席いただき、売却に至る一連のスケジュ-ルを相続人に説明していただいた。
売却候補地を説明し、専属専任媒介契約締結のうえ、早速手続き開始する。
売却希望価格は昨今の不動産市況からそう高くは設定しづらい状況ではあったが、だめもとで最初は高めに設定してもらうこととした。
なお、売却する場合、隣地境界確認が必要なため、相続人に了解いただき、提携先の土地家屋調査士に測量依頼を行った。
この後、売却物件の途中報告や土地家屋調査士からの作業報告を受けるため相続人との打合せを数回行った。遺産分割についても同様に、相続人の要望をとりいれつつ数回にわたり修正を行った。

平成**年10月 所得税の準確定申告

所得税の申告は通常は1暦年の収入に対して、収支計算し申告可否を判断し、申告の必要があれば、例年2月16日から3月15日までの間に申告手続きをしなくてはならない。
年の中途に亡くなった場合は規定が異なり、亡くなってから4か月以内に申告しなければならないことになっている。
今回相続についても、相続人からお預かりした所得税申告資料等を整理のうえ、申告書の提出が必要と判明し、確定申告書を作成し、所轄税務署に申告書提出。同時に所得税も納めていただいた。

平成**年11月

不動産購入希望の業者が現れた旨の連絡をいただく。マンション建設のディベロッパ-であった。
購入希望価格はだめもとで提示した額であった。自分のことのようにうれしくなった。

財産内容の最終確認・遺産分割協議書の作成

仲介先の不動産会社から、購入先の会社財務内容等、売却先にはほぼ問題がないとの報告を受けた。相続人に仲介先より説明いただき、売却先を決定した。

この結果を受けて、売却金額で相続税が納められるように売却不動産の各相続人の持分を計算するとともに、相続財産の最終確認用資料を作成した。
遺産分割協議書の最終案も作成する。相続人に連絡し次回打合せ日程を決定。

ご相続人との打合せ

持参した打合せ資料に基づき、相続財産に漏れがないか確認を行う。
遺産分割協議書の分割案を確認いただき、併せて各相続人の相続税額の説明を行う。当日は仲介業者にも時間をずらして同席いただき今後の資金決済までの説明を受ける。
申告期限までまだ時間があり、今後新たに財産がでてくる可能性もあることから、遺産分割協議書の調印は年を明けてから行いたかったが、売却手続きを進めるにあたり、売却不動産の名義変更を早めに行う必要があるため、売却不動産のみの遺産分割協議書を先に作成し調印いただき、後日残りの財産についての遺産分割協議書を作成する旨提案したところ了解をいただいた。

このスキ-ムは各相続人にとっては2回遺産分割協議書に署名捺印をしなければならないわけであり、財産承継に対して相続人全員が同じ方向を向いている場合のみ提案できる手法でり、円満相続の典型的な案件だと改めて感じた。
早速売却物件のみの遺産分割協議書を作成し、署名捺印いただき、司法書士へ登記依頼を行った。

売却不動産の遺跡発掘調査

売却不動産の所在地は開発許可の前提条件として市の遺跡発掘調査が義務づけられている地域であり、条件付の売買契約であった。発掘調査は約1か月。かなり大々的に行ったが、多少の遺跡(貝塚跡)は発掘されたものの問題なしという結果であった。

平成**年1月 残余財産の遺産分割協議書捺印

電話連絡等で先に提示した最終の財産内容の確認を行う。財産に漏れがないことを確認し、残余財産の遺産分割協議書を作成する。署名捺印いただく日程を調整し訪問する。
署名捺印いただき、司法書士へ登記依頼を行う。

平成**年2月

売却物件ついては開発業者サイドでの行政上の問題点もクリアされ、買主の資金決済の段階に入った。
実は申告期限までに資金決済できないときのことを想定し、金融機関から短期の借入も視野に入れて動いていたが、仲介業者より申告期限までに売却金額は着金できる見通しであるとの報告を受け、金融機関には断りの一報を相続人から入れていただいた。
ここまでくれば、あとは申告書の提出と納税のみとなり、張りつめていた気持ちが一気に緩んだ。後日とんでもないトラブルが発生することなど夢にも思わず・・・

平成**年3月 相続税申告書押印

申告を翌月に控え、相続財産の最終確認も終わったことから、少し早めではあるが申告書提出の準備を始める。
提出するものとして申告書の他、相続関係図、財産内容が把握できる資料、戸籍等の資料をひとつひとつ整理し提出用に仕上げる作業を行う。

トラブル発生

携帯に留守電が入っている。仲介業者からだった。時間が夜の7時であった。今までこんなことはなかったため、少し不安を覚える。案の定悪い予感は的中した。
買主サイドより保証会社との間で問題が発生したため、申告期限までに資金決済できないとのこと。血の気が一気に引いた。早速相続人に電話を入れる。すでに仲介業者より連絡が入っていたとのこと。かなり動揺されていた。
対処方法を検討。再度金融機関へ短期借入の打診をしていただくことで電話を切った。
その晩は全然眠れなかった。
翌日、相続人から金融機関に打診していただいたが、すでに打ち切りの通知をいれてしまっていたため、金融機関も当案件を打ち切ってしまったとのこと。借入する場合は再度稟議を起こすところから始めなければならず申告期限までには到底間に合わないことが判明した。

納税の検討

仲介業者より、買主および買主側の仲介業者同席で相続人に謝罪のため訪問し、事の経緯及び、今後の動向を説明させていただいた旨の連絡が入る。計画自体立ち消えとなることはないが、資金決済は少なくとも1か月はかかるとのこと。出先ではあったが、相続人に連絡のうえ、訪問することとした。
ペナルティはつくことにはなるが、申告期限後の納税であってもできないことではない。ただ、この相続を平穏無事に終わらせることが被相続人に対するせめてもの供養であると常々聞かされていたこともあり、相続人の心情を察するに、とにかく不安を払拭してあげなくてはならないと思い、相続税納付については以前説明したとおり現金一括納付が困難であれば延納申請による手続きが可能であると説明。とにかくやってみますと伝えた。ただ、だめもとで別の金融機関に借入の打診をお願いし、了解をいただいた。平成18年以降延納申請はその申請理由から事細かく詳細を記載した書類を提出しなければならず申告期限が差し迫ったこの時期に資料収集から1から始めるとなると正直自信がなかったが、やるしかないと割り切って腹をくくった。
準備しておいた相続税の申告書に捺印いただき、申告書だけは提出準備が整った。

九死に一生を得る

翌日相続人から電話が入る。別の金融機関に打診したところ何とかするとの回答を得たとのこと。思わず感嘆の声をあげてしまった。申告期限まであと数日のこの段階でよく決断していただいたものだとほんとうに感謝の気持ちで一杯になった。
仲介業者に電話を入れる。資金決済時期は4月末には何とかなると言われたが、何が起きるかわからないので、相続人には借入期間は最低3か月とって欲しい旨伝える。

平成**年4月 申告書の提出、相続税納付

相続人より借入日が決定した旨連絡が入る。既にお渡しした納付書にて金融機関で納付手続きいただく。弊社は相続税申告書の提出日は原則大安吉日の日と決めている。申告期限3日前が大安であった。税務署に申告書を提出する。
申告書提出後、申告書控えを相続人にお届けする。仏壇にお線香をあげさせていただき申告書提出の報告をさせていただいた。無事申告できて本当に良かった。

売却資金の決済

予定どおり、4月末に売却代金が決済された。早速金融機関への借入金返済手続きを進めてもらう。

佐伯税務会計事務所からの総括

今回の相続は、最後に少しばかり落ちがつきましたが、相続発生から納税に至るまでの一連の手続きはスムーズに滞りなく行くことができました。
不思議なことではありますが、今まで携わった相続の手続きの中で、円満相続の場合、何もかもが本当にいい方向に事が進んでいるという事実は、今回も間違いなく当てはまりました。
ご依頼をいただいた仕事はどの案件に優劣があるということではなく、常に全力で依頼者の期待に応えるべく挑んでおりますが、終わったあとの充実感やさわやかさには多少なりとも差があるもので、そういう意味で今回ご依頼いただいた案件は数ある相続案件のなか、深く心に刻まれるいつまでも記憶に残るもののひとつとなっております。


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